【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~

番外編

 想いを通じ合わせたあの日以降、フレデリカは、約束通り、シュトラウスと何度も夜をともにしていた。
 今日も「離れにこないか」とシュトラウスに誘われ、フレデリカはドキドキだ。
 お誘いを受けるたび、「今日こそ!? 今日こそなの!?」と思うのだが……。

 翌朝、シュトラウスと同じベッドで、フレデリカは目覚める。
 まだぼうっとしながらも隣を見れば、シュトラウスはまだ寝息をたてていた。
 ベッドに入るときこそ緊張するが、彼の腕の中は心地よく、いつも通りすぐに眠ってしまい――このお泊まりでも、なにも起きなかった。
 ぐっすり眠って元気元気なフレデリカ。
 早くに頭も覚醒し、むうっと頬を膨らませた。

 お泊まりの回数だけは多いが、フレデリカは未だ、彼になにもされていない。
 本当に、ただのお泊まりである。健全だ。

 想い合う婚約者二人のお泊まりって、これでいいの!?

 と、フレデリカは思うのだが、なにも起きないものは起きないのである。
 フレデリカにむーっと睨まれているものの、シュトラウスはまだ起きそうにない。
 これまで知らなかったが、彼はどうも、朝に弱いようだった。
 今日は仕事のはずだが、起こすにもまだ早い時間だったため、フレデリカはそっとベッドを抜け出した。

 しばらくすると彼も起きてきたが、寝不足のようで顔色も悪く、どこかよろよろとしている。
 フレデリカがお泊まりした日、シュトラウスはいつもこうだ。
 おはよう、と声をかけると、まだぼーっとした彼からも同じ言葉が返ってきた。
 朝の支度のため、使用人がやってくる。
 フレデリカは、今日も何事もなく身だしなみを整え、シュトラウスの離れから公務に向かった。
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