【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「……留学期間が終わって国に戻ったら、すぐにイヴェルクに向かうようにと書いてあったわ。どうせ結婚するんだから、さっさと出て行って欲しいんでしょうね」
「そんな……」

 アルフレドは、痕がつきそうなぐらいに、ぐっと拳を握る。
 アルフレドも知っていることだが――ルーナは、フレデリカと似た立場の女性だった。
 違うのは、家族の庇護があったかどうか。

 ルーナは、王の第一子だが、側妃の娘だった。
 あとになって、正妃とのあいだに男児が誕生し、側妃も娘も不要だったのではと言われるようになった。
 ここまでは、フレデリカと同じだ。
 しかしその後、フレデリカはシュトラウスと婚約し、第二の王家とも言われる家の後ろ盾を得て、その立場を盤石なものとした。
 フレデリカは、家族に愛され、守られた王女だった。

 ルーナは違う。彼女は、そんな風に守ってはもらえなかった。
 母である側妃は身体を壊し、寝込みがちに。
 王も弟妹もルーナを守ることはせず、周囲の者と一緒になって彼女を厄介者扱いした。
 ハリバロフに、ルーナの居場所はなかった。

 だから彼女は、リエルタへの留学を希望したのだ。
 リエルタでは、ルーナは不要な人間ではなく、隣国の姫として丁重に扱われる。
 それにリエルタには、ルーナの立場を理解してくれるフレデリカ、自分によくしてくれるアルフレドがいる。
 ルーナにとっては、母国よりも、リエルタのほうが居心地のよい場所だった。
 作り物ではない、自然な笑顔が増え、素の自分でいられた。
 みんな、自分という人間を受け入れてくれた。

 しかし、楽しい時間ももう終わる。
 ルーナは、もう、現実に帰らなければいけない。
 帰国したら、他国の婚約者の元へ向かわねばならない。
 国益と、厄介払いを兼ねた婚約だ。ルーナはすぐにでも、母国を追い出されるだろう。

「……アル。1年間、ありがとう」

 黄金色の景色の中、ルーナは、精一杯に笑ってみせた。
 目じりに浮かぶ涙に、アルフレドは気が付いていたが、婚約者のいる彼女に触れることは、できなかった。
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