【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「シュウはね、私が幼い頃、肩車をしてぶどうを見せてくれたことがあるの! そのあと、私が選んだぶどうをシュウが収穫して、一緒に食べて……。あのとき食べたぶどうが、今までで一番美味しかったなあ……」
「麗しの幼少期ね! それで、最近はどうなの? 進展あった?」
「うっ……」
「……なさそうね!」
「ないから子供の頃の話になっちゃうのお……!」

 そう言うと、フレデリカはぺしょっと突っ伏し、ぺちぺちとテーブルを叩いた。
 気品のある王女とは、程遠い姿である。

「シュウ……。忙しいのはわかるけど、もう少し、私にも時間をくれたら……」
「フリッカ……」

 テーブルに突っ伏したまま、フレデリカは続ける。

「10歳ぐらいの頃だったかな。シュウにいさまって呼び方が恥ずかしくなって、シュウ、って呼び方に変えたの。ちょうどそのくらいの頃から、彼がなんだかそっけなくなって」

 過去を懐かしむような、それでいて、どこか寂しそうに紡がれる言葉。
 ルーナは、静かにフレデリカの話を聞いていた。

「子供のころみたいに、ずっと兄妹のままじゃいられないのは、わかってる。小さい頃が、近すぎただけなの。シュウは、まだ5歳だった私に気を遣って、兄として振る舞ってくれていただけ。今が、普通の婚約者の距離なのかも」

 婚約したばかりのまだ幼いフレデリカは、シュトラウスに抱き着き、頭を撫でてもらっていた。
 身を寄せ合ってお昼寝したことだって、何度もある。
 成長するに従い、そういった触れ合いは減っていった。

 今では、社交の場などでの最低限の身体の接触しかなく、二人きりで会うこともほとんどない。
 話す必要のある用事があるときに、少しやりとりする程度だ。
 初めこそ、フレデリカからシュトラウスを誘ったが、仕事があるからと断られることが増えていき。
 拒絶されることを恐れたフレデリカは、二人で過ごしたいと言い出すことも難しくなっていた。
< 15 / 183 >

この作品をシェア

pagetop