【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 新郎新婦が並んでバルコニーへ出れば、集まった民衆からはわっと歓声があがる。
 二人の顔を知る国民は少ないものの、次期公爵と王女の美男美女カップルであることは有名だ。
 初めて二人の姿を見る者も多く、庭からはフレデリカの美しさを讃える男女の声と、シュトラウスに向けられた黄色い悲鳴が聞こえてくる。
 そんな国民たちに、二人はにこやかに手を振って応えた。
 しかし、近くには兵が配置され、二人の立ち位置も、シュトラウスがやや前に出る形となっている。
 いざというとき、すぐに彼女を庇うためだ。



 その頃、王城の庭やその周辺では、ストレザン領から派遣された者を含む多くの兵が目を光らせていた。
 シュトラウスの指示通り、銃が仕込まれている可能性のあるものは、持ち物検査の段階で預かるようにした。
 多くの人がいる中で、先が尖っているものや長いものを持つと危ないから、と言えば、納得する国民が多かった。
 ただ、足腰の弱った老人から杖を没収することはできなかった。
 だから、一般入場した者の中で、それなりの射程を有する仕込み銃を持つ人間がいるとしたら、老人、もしくは老人に扮し、杖を持つ者である可能性が高い。
 
 大歓声の中、一人の男が、杖を撫でながら、状態を確かめるかのようにして持ち上げ、先端をそっとバルコニーへ向けた。
 彼は、バルコニーの真ん前ではなく、やや横にそれた、土が盛られて高くなった場所に立っていた。
 この男こそが、テネブラエにフレデリカの暗殺を命じられた人間だった。
 さあこのまま王女を狙撃しようというとき――

「っ……!?」
 
 男は両手と口を封じられ、音もなく兵に連行されていった。
 実行犯を確保したのは、シュトラウス直々にストレザン領から招集した、ベテランの国境警備兵であった。
 ただの国民のふりをして私服で紛れ込み、フレデリカを狙いやすい位置に陣取っていた。
 予想は的中し、無事に実行犯を確保。
 長年国境を守ってきた勘と観察眼が、領主の妻となる女性を守ったのだ。
 男を引き渡したあとはすぐに警備に戻ったが、以降、そのような動きをする者はなく。
 新郎新婦の国民へのお披露目は、何事もなかったものとして終了した。
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