【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「いえ、自分の用件は書面でも済むものですから。ルーナ様はお気になさらず、このままお過ごしください」
「……婚約者同士の逢瀬に水を差すほど、野暮ではなくてよ?」

 逢瀬、という言葉に、フレデリカがぼっと顔を赤くした。
 そんなフレデリカとは対照的に、シュトラウスは顔色一つ変えない。


「女性同士、姫同士の時間を、俺が邪魔をするわけにはいきません。お二人が仲良くなることは、双方の国にとっても意義のあることですから」

 では、と、シュトラウスは書類だけをフレデリカに渡し、その場から立ち去ろうとする。
 おそらくその紙に、シュトラウスのスケジュールが記載されているのであろう。
 先ほどまでわくわくどきどきの恋する乙女をやっていたフレデリカは、肩を落としてすっかりしょんぼりしていた。
 せっかく一緒に過ごせると思ったのに、書面だけを置いて立ち去られてしまう直前なのである。
 がっかりもするというものだ。
 シュトラウスをこのまま行かせまいと動いたのは、ルーナだった。
 ふう、とわざとらしくため息をつき、フレデリカの頬に触れる。
 視線はシュトラウスに向けて、ふふ、と魅惑的な笑みを浮かべた。

「シュトラウス。そんなことでは、フリッカは我が国でいただいてしまうわよ?」

 ルーナの挑発的な行動に、シュトラウスの眉がぴくりと動いた。
 その反応を見て、ルーナはフレデリカの髪に触れながら、さらに追い打ちをかけていく。

「ねえフリッカ。婚約者を放ってどこかへ行ってしまう男なんてやめて、ハリバロフに嫁ぐ気はない? 第一王女ルーナの名にかけて、いい人を紹介するわよ」
「へ? ルーナ!? いきなりなにを言って……」
「……お戯れを。ルーナ姫」

 姫をもらっていくぞ宣言を前にして、流石にこのまま立ち去れなくなったシュトラウスは、フレデリカの隣に腰掛けた。
 ルーナの狙い通りである。勝ったわ、とルーナから満足げな笑みが漏れる。
 
「それじゃあ、また後でね。フリッカ」

 シュトラウスを残すことに成功したルーナは、ウインクとともに退室した。
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