【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「どうだった?」

 後日、ルーナとの秘密のガールズトークにて。
 あの日――ルーナが退室し、フレデリカとシュトラウスが二人きりになった日のことだ――について、ルーナはわくわくした様子で質問を投げかけた。
 最初こそ、

「シュウってやっぱりすごくかっこよくて」
「若いのに仕事もできるし、本当にすごいの」
「忙しいのだって、みんなに頼りにされてるからだし」
「それでね、それでね」

 と、元気いっぱいに話していたフレデリカであったが――。
 だんだんと声がしぼんでいき、

「触ってくれなかった……」

 と哀愁たっぷりにテーブルに突っ伏した。
 ルーナからすれば、見慣れた光景である。
 フレデリカは、残念なことや悲しいことがあると、こうしてぺしゃっとする癖がある。
 ルーナは、自分がその癖を知る数少ない人間であることに、若干の優越感を抱いていたりする。

「触ってくれなかったって、どういうこと?」

 フレデリカのつむじを眺めながら、ルーナが紅茶を口にする。
 優雅なルーナとは対照的に、フレデリカは今もテーブルとお友達だ。

「頭を……」
「頭を?」
「撫でてくれるのかと、思ったの」
「ほほう」
「シュウの手が伸びてきて、私の頭に触れそうになって……。触らなかった」
「触らなかったかあ……」
「触らなかったのお……」

 弱々しい声ではあるが、本人の気持ち的には悲痛な叫びである。
 シュトラウスはあの日、フレデリカの頭に手を伸ばして……触ることなく、ひっこめた。
 彼の動きは、フレデリカだってしっかり見ていた。
 あの時、フレデリカは期待したのだ。幼い頃にように、自分の頭を撫でてくれるのではないかと。 
 しかしそうはならず。指一本触れることなく、シュトラウスは自分の元を去ってしまった。
 触れてもらえなかったこともそうだが、以前とは違うのだと突きつけられたようで、悲しかった。
< 23 / 183 >

この作品をシェア

pagetop