【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 彼女に「シュウ」と呼ばれた日を、シュトラウスはよく覚えている。
 当時の年齢は、フレデリカ10歳。シュトラウス17歳。
 教育期間を終え、いよいよ王城勤めが始まろうとしていた頃だった。

 その日、シュトラウスはフレデリカと王城の庭で過ごす約束をしていた。
 彼女との待ち合わせ場所、王城の中庭、噴水前のベンチにて。
 約束の時間より少し早く到着したシュトラウスは、彼女を待つあいだ、読書をして過ごすことにした。
 目の前の本に集中していたから、気が付かなかった。
 フレデリカが、後ろからこっそりと近づいてきていることに。
 
「えいっ!」

 そんな可愛らしい声とともに、突然、シュトラウスの頭上をなにかが舞い始める。
 何事かと思いよく見れば、花びらのシャワーだった。
 誰かが、シュトラウスの頭上から花びらを降らせたのである。
 超名門公爵家の嫡男であるシュトラウスにこんなことをする人間、心当たりは一人だけ。

「えへへ。びっくりした?」

 満足げなフレデリカが、ひょこっとシュトラウスの前に現れる。
 やはり、この少女だった。出会った時のおどおどした姿が嘘のように、今のフレデリカはよく笑う。
 シュトラウスは、妹分の彼女が可愛くて仕方がなかった。
 兄とはみなこんな気持ちなのだろうか、と妹を持つ友人に聞き、「バカ言うな」と返されたこともある。

「うん。びっくりしたよ。花の妖精かと思った」
「よ、妖精だなんて」
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