【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 頭にのった花びらをはらうこともせずこう答えると、フレデリカは慌てた様子を見せてから、ぽっと頬を染めた。
 それから、なにやらもじもじとし始めて、彼女は静かになった。
 ――妖精は言い過ぎたか。
 本当に妖精のようだと思ったのだが、フレデリカを困らせてしまったようだ。
 ごめんごめん、と彼女の頭を撫でようと手を伸ばしかけたとき、顔を赤くしたままのフレデリカが顏をあげ、いくらか視線をさまよわせてからシュトラウスを見つめ――

「……シュウ」

 と。小さな声だったが、たしかにそう言った。
 それまで、シュトラウスのことを「シュウにいさま」と呼んでいたフレデリカが、呼び方を改めた瞬間だった。
 気恥ずかしそうに、これでいいかと確かめるように、「シュウ」と口にした彼女を見て、シュトラウスは思う。
 ああ、ついにこの日が来てしまった、と。

「いつまでもシュウにいさま呼びは、ちょっと恥ずかしいなあって思って、変えてみたの。……ダメ、だった?」
「……いや。構わないよ。きみももう、恥ずかしがる年なんだね」
「もう! 子供扱いして! 私だってもう10歳なのに」

 唇を尖らせるフレデリカは、いつもと変わらず愛らしい。
 彼女は、シュトラウスの可愛い可愛い妹分。けれど、本当の妹ではない。
 シュウにいさまから「シュウ」に呼び方が変わったことで、その事実を突きつけられたような気持ちになった。

 その日は、動揺を隠しきり、フレデリカと共に過ごした。
 二人の時間を終え、自分の部屋――王から与えられた、離れの一棟だ――に戻ると、シュトラウスは倒れ込むようにしてベッドに身を預けた。
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