【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「フリッカ……」

 執務室のソファに横になったまま、天井に向かって手を伸ばす。
 そんなシュトラウスの手を、部下がべちんとひっぱたいた。
 公爵家嫡男をひっぱたく、部下とは思えぬこの態度。
 彼の名は、ブラーム・ラフレッサ。伯爵家の三男だ。
 故郷であるストレザン領からシュトラウスが連れてきた、彼の幼馴染で、親友であった。
 もちろん、仕事の腕のほうも信用していい。

 ストレザン領は広大で、1つの公爵家だけではとても管理しきれない。
 そこで、ストレザン家が頂点に君臨する形で、他の貴族たちに領地を分配した。
 多くの貴族たちを管理しまとめる家だから、第二の王家と呼ぶ者もいるのだ。
 ブラームが生まれたラフレッサ伯爵家は、ストレザン公爵家の傘下にある。
 伯爵家の三男として生まれた彼は、早いうちからシュトラウスの補佐官候補として育てられていた。
 地位の差こそあれど、昔馴染みであるため、ブラームはシュトラウスに対して容赦ないところがある。

「お・き・ろ」
「わかったよ……」

 ブラームにすごまれたシュトラウスは、執務室のソファからのそのそと起き上がる。
 仕事部屋として王城内の一室を与えられており、今はこの部屋にブラームと二人きりだ。
 いくつかの机や棚に、食事や来客応対にも使えるテーブルとソファがある程度の簡素なものではあるが、あまりにもごてごてと飾り立てられているよりはよかった。

 ここ最近、普段より忙しく、まとまった睡眠が取りにくい。
 それでは作業効率も下がるので、少し仮眠してから仕事を再開しようと思い、時間になったら起こすようブラームに命じて一休みしたのだった。
 覚醒を促すためにぐいと身体を伸ばし、ゆっくりと深呼吸した。
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