【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 ルーナとの会議を終えたフレデリカは、シュトラウスの執務室を訪れた。
 今回も、彼へのちょっとした贈り物を用意している。
 シュトラウスと彼の部下のブラームも、フレデリカの来訪に慣れてきたようで、すんなりと中に通された。
 最初は驚いた顔をされたものだが、今では「ああ、フリッカか」と穏やかな笑みとともに受け入れられている。
 ブラームには、「シュトラウスのやつ、喜んでるんですよ」と言われるぐらいだ。

 こういったやりとりを経て、フレデリカも少しばかり自信がつき。
 ルーナの後押しもあり、もう少しの勇気を出してみることにした。
 いつもなら、プレゼントを押し付けたらさっさと逃げてしまうフレデリカであったが、今日は違う。
 シュトラウスに小袋を渡したあとも、彼の前に立っていた。
 頬を染め、もじもじと視線をさまよわせるフレデリカを、シュトラウスが不思議そうに見つめる。

「フリッカ?」
「あの、シュウ。今度のお休み、一緒におでかけしない?」
「おでかけ?」
「うん。何度か渡したクッキーやハーブティー、お店でも楽しめるの。喫茶店なんだけど、そこで食べたらもっと美味しいのかなあって思って。よかったら、二人で……。どう?」

 フレデリカは、不安げにシュトラウスを見上げた。
 これまで、こういった誘いは断られてしまうことが多かった。
 いくらか距離が縮まったような気はしたが、今回も、「ごめん」と返されてしまうのかもしれない。
 彼の返事を待つ少しの時間が、永遠のようにも感じられる。
 耐えきれず、フレデリカは下を向き、きゅっと目を閉じた。
 しかし、彼女の瞳はすぐに開かれることとなる。

「フリッカ」

 ふわり、となにかが優しく自分に触れる感触。
 驚いて目を開ければ、シュトラウスが少し困ったように微笑んで、けれど瞳には愛おしさをにじませて、フレデリカの髪に触れていた。

「……シュウ?」

 こうして触れられるのは、何年ぶりだろう。
 ぽかんと口を開けて彼を見上げると、シュトラウスは慌てて手を引き、こほんと咳払いした。

「あ、あー……。喫茶店だったか。きみさえよければ、是非ご一緒させてもらおう」
「……!」

 フレデリカの表情が、ぱあっと華やいだ。
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