【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
元々、シュトラウスはこの婚約に乗り気ではなかった。
だから、会ってみてどうしても無理だと思えば、王女のほうから嫌だと言うよう仕向けるつもりだった。
自分に拒否権がないのなら、相手に嫌だと言わせればいいのだ。
王女に嫌われるための、問題にはできない範囲の意地悪なんかも考えていたのだが、今のシュトラウスにそれらを実行に移す気はなかった。
それどころか――。
「シュト、ラウス……ストレ、ザン……」
「シュウ、で構いませんよ」
今しがた聞いたばかりの名を復唱するフレデリカに、こんなことまで言う具合である。
ゆっくりと、どこか言いにくそうにしていたものだから、ついつい、愛称呼びを提案してしまった。
フレデリカのほうはといえば、少しの間をおいてから、
「シュウ」
と、初めて見せる笑みとともに、シュトラウスの愛称を口にした。
鈴を転がすような、とはこういうときに使うのだろう。
澄んだ声に、柔らかく細められた青い瞳。
とろけるような愛らしさを前に、シュトラウスからも自然と笑みがこぼれた。
「はい。フレデリカ様」
「……フリッカ」
「え?」
「フリッカって、呼んで?」
庇護欲をかきたてる少女に、こてんと首を傾げられ、そんなお願いをされてしまったら。
既にフレデリカが可愛くてたまらないシュトラウスは、彼女の要望を聞き入れ、初めて会ったその日に王女を愛称で呼ぶようになった。
だから、会ってみてどうしても無理だと思えば、王女のほうから嫌だと言うよう仕向けるつもりだった。
自分に拒否権がないのなら、相手に嫌だと言わせればいいのだ。
王女に嫌われるための、問題にはできない範囲の意地悪なんかも考えていたのだが、今のシュトラウスにそれらを実行に移す気はなかった。
それどころか――。
「シュト、ラウス……ストレ、ザン……」
「シュウ、で構いませんよ」
今しがた聞いたばかりの名を復唱するフレデリカに、こんなことまで言う具合である。
ゆっくりと、どこか言いにくそうにしていたものだから、ついつい、愛称呼びを提案してしまった。
フレデリカのほうはといえば、少しの間をおいてから、
「シュウ」
と、初めて見せる笑みとともに、シュトラウスの愛称を口にした。
鈴を転がすような、とはこういうときに使うのだろう。
澄んだ声に、柔らかく細められた青い瞳。
とろけるような愛らしさを前に、シュトラウスからも自然と笑みがこぼれた。
「はい。フレデリカ様」
「……フリッカ」
「え?」
「フリッカって、呼んで?」
庇護欲をかきたてる少女に、こてんと首を傾げられ、そんなお願いをされてしまったら。
既にフレデリカが可愛くてたまらないシュトラウスは、彼女の要望を聞き入れ、初めて会ったその日に王女を愛称で呼ぶようになった。