怖い部屋-やってはいけないことリスト-
すべて実行する

聞こえてきた言葉の意味が理解できる前に、和也は1人で湯船につかっていた。
外はとても寒いから肩まで暖かなお湯につかっていると気持ちがいい。

つい、鼻歌だって歌いたくなってしまう。
その気持を押し殺して浴室内を見回してみる。

空間は湯気で曇っていてよく見えないけれど、明るくて清潔感のある浴室だ。
とても幽霊が出そうな雰囲気ではない。
少し安心して和也は目を閉じた。

お湯は心地よく体を包み込んでくれている。
そこでごく自然に鼻歌が口をついて出てきていた。
最近流行っている女性アイドルの曲で、和也も密かに毎日のように聞いていた。

亜希には冷やかされそうだから内緒にしている。
アイドルに興味があったんだと、笑われてしまうかもしれないし。
最初のサビ部分まで歌ったところで、微かな異変を感じた。

さっきまでとても心地よかったお湯が、少しだけぬるくなったように感じたのだ。
外の気温のせいでお湯が冷めるのが早いのかもしれない。
しかし、お湯を継ぎ足してみてもそのぬるさは変わらない。

いや、さっきまでよりもどんどん冷たくなっていっているようにも感じられて和也は湯船の中で膝をかかえた。
なにかが、いる。

気配を感じて身を固くしたそのとき、水面に人の顔のようなものが映ったのを見た。
それはさっき写真で見たショートカットの女性と、女の子の顔だ。


「うわっ!」


悲鳴を上げてすぐに湯船から出ようとするが、女の子の顔が微笑んでいたので和也は動きを止めた。
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