怖い部屋-やってはいけないことリスト-
鏡に映っていた女の子は青ざめて血だらけだったのに対し、こちらでは血色の良い生き生きとした肌をしている。
だから、余計に気になってしまった。
水面に映るふたりの姿を見つめたまま、和也はまたは鼻歌を歌い始めた。

恐怖のせいで声が震えて下手くそな鼻歌が、浴室内に響く。
そのとき、水面の少女が同じようにハミングしてみせたのだ。
目を閉じて、心地よさそうに。

その声も微かにだけれど和也の耳に聞こえてきた。
幼いその声は、夜中に聞いた泣き声とよく似ている。
女の子が鼻歌を歌う隣で、ショートカットの女性も同じように鼻歌を歌い始めた。

ふたりは寄り添い、とても幸せそうに見える。
その瞬間、和也はあぁ、このふたりは親子なのだと理解した。
どうりで顔がよく似ているはずだ。

ハミングするその声質もよく似ていた。

このふたりが親子なのだとすれば、残ったもう1人の女性は誰だろう?
そう考えた時、包丁が落下する寸前に『お姉ちゃん』と呼ぶ声が聞こえてきたことを思い出した。

あの声がセミロングの女性の声だとすれば、水面に映るショートカットの女性の妹ということになる。
3人共それぞれ顔が似ていることを考えれば、親子と、親戚。
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