好きな事を言うのは勝手ですが、後悔するのはあなたです

7  浮気現場!?

 リリンラ様からの手紙の内容をお父様に話すと、ハック様が本当に浮気しているのかどうか、調べてくださる事になった。

 リリンラ様に自分で調べていただきたいけれど、こっちで調べて証拠をつかみ、リリンラ様にではなく、お父様からコッポプ伯爵に連絡する事になった。

 ちなみに、ハック様とリリンラ様はまだ婚約もしておられない。

 なぜなら、コッポプ伯爵が認めてくれていないから。
 ハック様がまた浮気すると思っているみたい。

 というか、本当に浮気してるみたいだから、コッポプ伯爵の判断は正しいのかもしれないわね。

 子供の事を思うと、シングルマザーになるのか、それとも浮気するとわかっている相手でも結婚すべきなのか、どっちなのかしら?

 ただ、リリンラ様の場合はシングルマザーになっても、伯爵家で育てられるわけだし、何不自由なく生活出来るから、子供が大きくなる、もしくは生まれてくるまでに、素敵な旦那様が見つかれば、それで良いのかもしれないわね。

 ……ああ。
 私ったらまただわ!

 こうやってリリンラ様達の心配をするから、「お人好し」って、ラルだけじゃなく、ミーファにも怒られる様になったのよね。

 気分を変えたかったのと買い物したいという用事もあり、今日は学園が休みなので、ラルと一緒にお出かけする事にした。

 今までは休みの日はハック様と一緒に出かける事が多かった。

 初めて手を繋いで歩いた時は、本当にドキドキした。

 いつの間にか、手を繋ぐ事に慣れて、これからもずっと、そんな日が続くと思っていたのに…。

「おい、目的の店の前を通り過ぎたぞ」

 背後から声が聞こえたので、足を止めて振り返ると、呆れた顔でラルが目的の店の前で立っていた。

 考え事をしていたから、通り過ぎてしまった事に気が付かなかったみたい。

「何をボーッとしてんだよ」
「ご、ごめんなさい…」
「……」

 ラルはこれ見よがしに大きくため息を吐いた後、私の方に歩いてきて言う。

「入るんだろ?」
「うん。入る」
「行くぞ」

 そう言って、ラルは私の左手首をつかんで店の方に向かって歩き出す。

「え? ちょ、ラル!?」
「こうしておいたらはぐれないだろ」
「で、でも、これ、誤解されるんじゃ!?」
「誤解されて困る奴でもいんのか?」
「……私はいないけど、ラルは?」
「俺もいない」

 ラルは私の方を見ずに素っ気なく答えた。

 本当にそうなの?

「…ラルは、誤解されたら困る人、本当にいないの?」
「……!?」

 何の前触れもなく聞いてしまったからか、ラルが珍しく焦った顔をして私の顔を見た。

「あの、ちょっと、聞いてみたかっただけなんだけど…」
「いない」

 さっきの反応だと、いるっぽいのよね…。
 ラルの恋の話とか聞いてみたいけれど、そういう話をしてくれる人じゃないし諦める事にする。

 今日、やって来たのは、もうすぐミーファの誕生日という事もあり、彼女への誕生日プレゼントを買う為だった。
 ミーファは可愛い雑貨が好きなので、何個か目星をつけておいた雑貨屋さんの1件目がこの店だった。

 どうしてここに来たのか聞かれて、ミーファの話をしたからか、ラルが聞いてくる。

「そういや、お前の友達、結局どうなったんだ?」
「あ、うん。今は婚約解消する、しないでもめてるの。ミーファは許せないって言ってるんだけど、相手側はミーファと婚約解消したくないんだって」
「はあ? それなら、なんで婚約者の悪口を他の男の前でするんだよ」
「ミーファが聞いた話では、素直に自分の婚約者を褒めるのが照れくさくて言っちゃったんですって。ハック様もリリンラ様の悪いところばかり話をしていたからって」
「意味わからん。なんで照れくさいからって悪口言うんだ。何も言わなきゃいいだけだろ」

 ラルは呆れた顔をして続ける。

「それが本心なら、一度、婚約解消して、信頼をもう一度取り戻せる様にアピールすりゃいいのに。まあ、相手が二度と顔を見たくない場合もあるから、その時は別だけど」
「そうね。ミーファも婚約者の事が好きだったからショックだったんだろうし、やっぱり…ってなった場合は応援するつもり」
「そうだな。お前と違って浮気されたわけじゃねぇし」
「照れ隠しとは思えない悪口だから、そう簡単に許したくはないけどね! だけど、私がこんな事を言ったら、ミーファが許したいのに許せなくなったりしても可哀想だから…」

 そこまで言ったところで、店の窓から外の通りが見えて、視界に入ってきた姿を見て動きを止めた。

「どうかしたのか?」
 
 私が答える前に、ラルが私の視線の先を見て「最悪だな」と呟いた。

 私達の視線の先には、リリンラ様以外の女性と腕を組んで歩いているハック様がいた。

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