ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
 哀れな子羊を騙る暗殺者が私を暗殺するつもりであると自供した姿は、はっきりと記録に収められたはずだわ。
 この映像はリアルタイムでディミオがつけているお揃いの首飾りに送信されて、上映会が開催されている頃ね。
 彼がやってくる前に、情報を引き出しておかないと……。

「私を裏切れば、どうなるか……わかっているね」
「ど、どうか妹だけは!妹だけはお救いください……!」

 捨て駒は人質を餌に言うことを聞かせるのが、一番てっとり早いわ。
 彼女は哀れな子羊な子羊を騙った、本物だたと言うわけね。
 私の暗殺を企てなければ、助けてあげられたのに……。

「貴様の命は保証できぬが、妹の命は保証してやろう」
「お願いします!私はどんな罪でも、喜んで実行しますから……!どうか、病気の妹だけは!」
「どんな罪でも喜んで実行するならさ。このいけ好かない顔を、ぶっ飛ばしてきてよ」
「……っ、皇太子殿下……!?」

 あら。走ってやってくると思ったのに。
 転移魔法でやってきたのね。それは予想外だったわ。
 ディミオは当然のようにアンエム伯爵……に成り代わった私を抱きしめ、床にうずくまる哀れな子羊を見下している。

 男同志で抱きしめ合うなんて……絵面が最悪以外の何者でもないわ。
 ディミオにとっては私がどんな姿に変化しようとも、中身が私であればどうでもいいと思っているからこそ、この異常性に気づかないのが難点ね。

「も、申し訳ございません……!どんな罰も受けますから!妹を助けてください!」
「助けてあげてもいいけど、まずはミスティナを殺害しようとしたことに謝罪をするべきだろ。アンエム伯爵とイギトフ卿、だっけ。ここに連れてきて」
「アンエム伯爵は、今殿下が──」
「君が殺したがっていた女の存在すら満足に認識できないなんて……哀れだね。ああ、ミスティナ。勘違いしないでくれ。おれはミスティナを愛している。殺害を企てたりしないから、機嫌を悪くしないで」
「機嫌など悪くはないわ。この程度、一人で充分よ」

 アンバーとツカエミヤの嘘発見器達がいれば、一人でも大丈夫の間違いだけれど。

 侍女と従者がいなければ、何も出来ない女と蔑まれるのも、問題ですもの。
 私はこれ以上自身の評判を落とさぬよう、変身魔法を解除した。
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