ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。

十数年後の未来で、あなたと

 『愛を知らない皇太子妃は、皇太子にたくさんの愛を注がれ、彼への思いを自覚しました。それは、婚姻後──』

 夜空を思い出す艶やかな黒髪。
 夜空に輝く一番星のような瞳を持ち、星空を象ったドレスを纏った女性が──星のようにキラキラと輝く髪と、深い海の底を思い出させるマリンブルーの瞳を持った少女を膝の上に載せながら、この国に纒わる伝承を読み聞かせている。

「お母様は、お父様ことが好きではなかったの?」
「ええ。お母様は、誰も愛していなかったのよ」
「だから叔父様は、今もお母様のことが大好きなのね!」

 天の川を連想させるドレスに身を包んだドレス姿の女性の膝上に座る少女は、海の底を思わせるようなセーラー襟付きドレスを着用し、女性の膝上で笑顔を浮かべる。

 少女の口から叔父と言う名を聞いた女性は、どこか遠い目をしながら、少女の頭を優しく撫でた。

「お兄様は、律儀に私との約束を守り続けているのよ」
「約束ー?お母様。叔父様と、どんな約束をしたの?教えて!」

 可愛らしくねだる少女に、女性は困ったように目を細める。
 2人だけの約束を、いくら相手が幼い娘でも──口にするのは憚られた。

「お父様に口を滑らせてしまったら、血の雨が振るわ」
「お父様には、内緒にするから!」
「内緒にすると約束した所で……あなたがお父様に勝てたこと、ある?」
「ない…………」

 にこにこと明るい笑顔を浮かべていたはずの少女は、しょんぼりと項垂れる。
 そんな娘の姿を見た母親は、彼女を元気づけるために本を閉じ、娘を抱き上げ立ち上がった。
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