ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「お父様を激怒させる話は、蒸し返さないのが一番だわ」
「お父様、叔父様のこと嫌い?」
「そうね。お父様は、私の気持ちがどうであれ……いつまでもお兄様の存在に、怯え続けているのよ」

 叔父は、少女の母親を愛している。
 母親はかつて、少女の父親を愛していなかった。少女の父親は、母親を愛する叔父に奪われてしまうのではないかと、気が気ではないのだ。それは母親が父親を愛し、娘が生まれた今も変わらない。

「愛しき星空の女神と、海の女神見習いは……今日も美しいね」
「お父様!」

 母親に抱き上げられた娘は、父親に話しかけられると満面の笑みを浮かべた。父親は当然のように娘を抱き上げた母親の腰を抱くと、2人まとめて持ち上げる。娘は大喜びではしゃいでいた。

「お父様、力持ちー!」
「ディミオ……妻と娘を恥ずかしい二つ名で呼ぶのは、どうかと思うわよ」
「名前で読んでほしかったのか。ごめんね、ミスティナ。機嫌を直して」

 喜ぶ娘の姿を見守りながら、母親の鋭い指摘を父親がなだめる。

 皇帝となったディミオは、皇后のミスティナ、二人の間に生まれた皇女マリスティと共に、幸せな日々を送っていた。

「貴方が愛していると囁いてくれたら、機嫌を直してあげてもいいわよ」
「もちろんだ。愛しているよ、ミスティナ。おれだけの女神……」

 ディミオは娘のマリスティがミスティナの腕にいることを配慮したのだろうか。不安ならば唇へ口付けを落とすのに、何故かミスティナの手を取って口付けた。
< 115 / 118 >

この作品をシェア

pagetop