ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。

 その姿を見て、娘のマリスティは元気いっぱいに宣言する。

「マリスティも、お父様のことが大好き!」
「あら、マリスティ。私のことは好きではないの?」
「お母様のことも大好きよ!」
「ありがとう。私も大好きよ。愛する娘……」

 ミスティナが愛する娘の頬に口付ければ、羨ましそうにその様子を見守る視線に気づく。
 ディミオはミスティナに、娘と同じように愛の言葉を囁いてほしいようだ。

 ミスティナは娘が生まれるまで、ディミオのことなど好きではなかった。
 婚姻した当時のミスティナは、生涯ディミオのことを好きになることはないかもしれないと漠然とした思いを抱えていた程だ。

 けれど、今は違う。

 ディミオとミスティナの間に娘が生まれ、二人で喜びを分かち合う度に──ミスティナは迷える子羊達よりも、家族を優先するようになった。

『誰かを愛したことはないし、誰かを愛することなど、生涯ないかもしれない』

 愛とは何か。
 悩んでいたミスティナは──今ならディミオに、胸を張って言える。

「愛しているわ。最愛の夫。ディミオ皇帝」
「皇帝は余計だよ」

 二人は世界で一番、幸福な口付けをした。
< 116 / 118 >

この作品をシェア

pagetop