ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「──ミスティナを哀れな子羊の前に送り出す為には、条件がある」
「第二皇子との婚姻以外なら、聞き入れるわ」
「親父!」

 お兄様は条件付きで転移魔法の使用を許可しようとするお父様を批難するけれど、私が優位であることは変わりないわね。
 先に第二皇子と婚姻すること以外をこちらも条件として提示すれば、条件だって大したことはないはずですもの。

「半刻以内に、けりをつけてきなさい」

 ほら、ね。
 12時間もあれば、問題を解決するには充分だわ。

「わかりました。お約束致しますわ」
「ふざけんな!」
「ミスティナを頼む」
「オレは知らねぇぞ……!」

 お兄様はお父様に吠えていたけれど、この決定が覆されるようなことはなかった。後で具合が悪くなろうが、哀れな子羊さえ救えれば、どうでもいいわ。

「では、行ってまいります」
「勝手に決めんじゃねぇよ!」

 覚悟を決めた女は強い。
 私は魔力回復薬を手にしたお兄様の腕を掴むと、お父様の転移魔法でラヘルバ公爵家へ転移した。

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