ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
 アクシー伯爵家の家業。
 それは、我が物顔で私腹を肥やす罪人たちに、裁きを下すことだ。
 助けを求める迷える子羊の姿を借り、下に見ていた人間から上に見られる屈辱を、罪人にプレゼントする。
 弱者と見下されていた人間が牙を向き、強者のように振る舞っていた人間を屈服させる瞬間が堪らないのよね。

「迷える子羊よ。私に願いなさい」

 私達は迷える子羊達が助けを求めるように逃げ場を塞ぐことはあっても、強要はしない。
 助けて欲しいと縋り願ったのは、迷える子羊の方だ。
 罪人に裁きを下した後やり過ぎだとか泣かれても、私は責任など取らないわ。

「お茶会の処刑人……アンジェラ・ラヘルバに、私が受けた屈辱を実感させたい……!」
「いいでしょう」

 契約書に殴り書きされた名前を見て、私は侍女の名を認識する。
 ツカエミヤと言うのね。これから半刻、私が変身魔法で容姿を借りる相手。

「貴方は普段、どのような口調や仕草をしながら、このお屋敷に務めているの?」
「私は……」

 ツカエミヤは私の質問に暗い表情をしながら答えた。あまりいい暮らしではないようね。
 私に与えられた時間はそう長くない。
 入れ替わりに必要な情報さえ得れば、後はどうとでもなるわ。
 私はツカエミヤの手を取ると、目を瞑るように告げた。

「これから貴方の姿を借りて、願いを叶えるわ」
「私の……?」
「半刻以内には決着をつける。その間は、誰にも見つからぬように姿を隠すのよ。ラベルバ公爵家に同じ容姿をした侍女が二人もいると騒ぎになれば、私と貴方の命はないわ」
「はい……!」

 ツカエミヤと私の安全には、お兄様が目を光らせてはいるけれど──この世に絶対などないわ。不測の事態で命を落とすこともあるのだから、無責任に命の保証などできっこない。
 お兄様には性格が悪いと非難されることも多いけれど、私達は命懸けで迷える子羊に成り代わっているのよ?
 私達と契約を交わしたからにはもう安心。安全圏で高みの見物なんて、許さないわ。
 すべてが終わるまで、私と同じ緊張感を味わって貰わないとね。

「さぁ、目を開けて」

 私は魔力回復薬によって回復した魔力を使い、変身魔法を発動させた。
 ツカエミヤと瓜二つの容姿をしている私を確認した彼女が悲鳴を上げそうになったので、私は慌てて彼女の口を塞ぐ。
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