ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「国の未来を憂うなら、絶対に提案できないであろうことを笑顔で提案するのはやめて」
「おれは君さえ手に入れば、他には何もいらないよ」
「冗談でしょう」
「本気だよ。おれは君を愛しているから。必ず君を、俺の妻として娶る。おれのことが大好きになって、おれと同じくらいの愛を抱いて貰えるように……努力するよ」

 たった一人の愛する女を攻略する暇があるなら、国のために尽力して欲しいわね。
 これだけ私が好きで愛していると騒ぐのならば、難しいかもしれないけれど。

「殿下が愛する……」
「うん」
「星空の女神は……夜空のように美しい黒髪と、星のように輝く瞳を持っている」

 私は手紙に書かれた内容を読み上げた。
 私の元にも手紙がやってきたことを暴露するようなものだけれど、彼が黒髪金目の令嬢に迷惑を掛けるようなことだけは避けなければ。

「心当たりのあるものは至急王城へ名乗り出よ。これは王命である。王命を破れば、裁きが下るだろう」
「それが、どうかしたの?」
「私は裁きを恐れない。このような手紙を受け取っても、殿下の前に姿を見せることはないわ。無関係なご令嬢を巻き込むのはやめて」
「10年経ったら、おれは君を諦めなければならない。今から君に瓜二つな令嬢に目星をつけておくのも、悪くはないよね」

 彼はやられたらやり返すタイプなのね……。
 10年と提案したのは間違いだったかもしれない。ただでさえ悪い体調が、更に悪くなりそうだわ。

「嫉妬などしないわよ」
「うん。知ってる。ツンツンしてる星空の女神も、愛おしい」

 箸が転んでもおかしい年頃みたい。
 この年でそんな状況になったら、手に負えないわね。
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