ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
 ツカエミヤが心配するのも、無理はないかもしれないわね。

「お兄様」

 お兄様はリラックスした状態でベッドに寝転がり、私を手招いた。
 お兄様はめったに病気なんてしないから……ベッドの上にいる所を見るのは、なんだか新鮮だわ。

「失礼します」
「おう」

 ベッドに上がった私はお兄様と距離を取り、膝を折って腰を下ろした。
 寝転がっているお兄様を見下すのは気分がいい。
 身長差の関係で、私はいつも見下されているから。

「寝ないのかよ」
「いい機会だから、お兄様の本音を知りたいと思って」
「あぁ?本音?」
「……お兄様は、私のことが嫌い?」

 お兄様は面と向かって私がそんな話をするとは思いもしなかったのか、目を丸くしている。
 幼い頃のお兄様は、いつだって私がこの言葉を呟くと、嫌いだと大騒ぎした。
 お兄様に嫌われたと大泣きする私を見ると、お兄様はいつも目を背けて自分は悪くないと弁解していたのよね。
 お兄様は……昔のように、嫌いだと口にするのかしら?

「……嫌ってたら、部屋に呼びつけたりしねぇよ」
「お兄様は……大人になったわね」
「はぁ?てめぇといくつ、年の差があると思ってんだよ」

 私は16歳、お兄様は22歳、お姉様は24歳だから……6歳離れている。
 お姉様とは8歳ほど年の差があるから、あまり交流がないのよね。
 年の離れた妹を、どう扱っていいのかわからないのかもしれない。
 私の幼少期は、お兄様と喧嘩していた記憶が半数を占めているもの。

「自分の機嫌を自分で取れるようになれば、立派な大人の仲間入りね」
「何いってんだよ。意味わかんねぇ」
「ほら。またそうやって機嫌を悪くする。お兄様の悪い癖よ?機嫌がいいなと思ったら、すぐ悪くなる……」
「てめぇのせいだろ」
「人のせいにしないで」

 お兄様が私を抱きとめようとしてきた手を、パシリと弾く。
 それほど強い力ではなかったけれど、お兄様は素直に手を引っ込めた。
 何か言いたげに唇を噛みしめる姿は、私を求めるお兄様の姿とぴったり重なって──。

「お兄様にとって、私は何なの?妹?愛する人?他人?嫌いな女?」

 私はお兄様に、様々な選択肢を与えた。
 この中から一つ私を称する答えを選び取ればいいだけなのに、お兄様は尻込みしている。

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