ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「お兄様。私は、ここにいるわ」

 お兄様に私の存在を知らしめるべく、少しだけ寄り添う距離を縮めて見る。
 私を抱きしめる力を強めると、静かになった。

「……ティ、ナ……」

 もう大丈夫かしらと、私の名前を呟くことがなくなったのを確認してから寝ようとすれば、お兄様は私の名を呟き始める。
 数え切れないほどに繰り返した私は、段々お兄様が手の掛かる子どものように思えてきた。

 仕方ないわね……。

 お兄様は私のぬくもりを感じると、私を呼ぶことはなくなるみたい。
 ツカエミヤの睡眠時間を確保する為にも、ここは踏ん張りどころよ。

「ミスティナ……してる……」

 してる?何を?

 耳を澄ませても、お兄様の呟きは私の名前を呼ぶだけで、聞こえない言葉を改めて紡ぎ直すことはなかった。

 もう、お兄様ったら……。

 図体だけ大きくなっても、まだまだ子どもね。
 私が優しく髪を撫で付ければ、お兄様は私の名前を呟かなくなった。

「おやすみなさい、お兄様」

 ツカエミヤとお兄様が、いい夢を見られますように。
 祈りを込めた私は、瞳を閉じると深い眠りに誘われた。
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