ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。

お兄様VS沈黙の皇子 溺愛合戦

1週間で150近い恋文

　まずはお兄様が手紙を処分する前に、中身を確認する必要があるわね。

「ツカエミヤ」
「は、はい！ミスティナ様……！」
「殿下の手紙を運んでくる鳥は、いつも同じ鳥だったわ。羽ばたく音に、見分けをつけられるかしら？」
「おまかせください！」

　殿下の手紙を運んでくる鳥は、お兄様目掛けて飛んで来ているわけではないのよね。
　お兄様が地獄耳の魔法を使って、いち早く居場所を確認しているだけだわ。
　ツカエミヤは地獄耳の魔法を使えるから、お兄様と同じ条件で手紙を運ぶ鳥をいち早く確認できるはずよ。
　問題は……どうやってお兄様よりも先に、手紙を受け取るかだけれど……。

「ミスティナ様！」

　ツカエミヤが指を差した方向から、鳥が羽ばたく音がする。
　どこからともなくやってきたお兄様は、鳥の姿を確認してため息。
　お兄様は背が高いから、手を伸ばした所で私のままでは手紙をお兄様よりも早く手にできない。
　変身魔法を使って、お兄様よりも背が高い人物に姿を変化させれば──私の勝ちよ！

「……！？」

　手紙を鳥の嘴(くちばし)から受け取ろうとしていたお兄様は、どこからともなくお父様が現れて手紙を手にしたことに驚愕している。
　私はお兄様が固まってるうちに、スタスタとダッシュで着た道を戻る。

「その侍女……！」
「ひ、ひぇえ！」
「ミスティナ！」
「逃げるぞ、ツカエミヤ！」
「うげ……っ」

　お父様の姿でツカエミヤの声を呼ぶ私を見たお兄様は、かなりのダメージを受けたらしい。
　私よりもお父様の方が足は早いから、今がチャンスだわ！
　私はツカエミヤを伴い、お兄様の前から姿を消した。

「手紙一枚手に入れるだけでも、これほど苦労するなんて……」

　変身魔法を解除した私は、殿下からの手紙を開封して中身を確認する。

『君を迎えに行くよ。待っていて。星空の女神。君を捕まえたら、二度と離さない』

　これはホラーだわ……。
　168通の手紙を無視していたら、背筋が凍るような手紙が送られて来たなんて……。
　知らない方が、よかったかしら……。