ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。
「覚えていなさい……!死ぬまで一生独身を貫き、カフシーに居座って見せるわ……!」
「無理だって言ってんだろ。諦めろ。カフシーに迷惑掛ける前にな」
「お兄様は他人事だから、私に酷いことを言えるのよ!」
「不幸になるわけじゃねぇんだから、いいじゃねぇか」
「何を言っているの!?第二皇子と婚姻すれば、私は仕事を奪われるのよ!?」

 私はカフシーの家業に、誇りを持っている。

 迷える子羊に成り代わり、幸福に導く。それは、カフシー家に生まれたものにとって定められた運命だ。迷える子羊達が私達に感謝し、幸せそうな表情で羊の群れに戻っていく姿は、いつ見ても喜ばしい。

 迷える子羊達は、カフシーの伯爵領に建てられた教会で祈りを捧げることがなければ、生涯苦痛に苦しみ続ける。
 命を散らしてしまうのではないかと心配するほど劣悪な環境に置かれている彼らが幸せそうな姿を見せてくれるだけで、私は満足だった。
 私がアクシー家の家業から足を洗えば、変身魔法を使える姉と母が主体となって続けて行くことになるんでしょうね。
 変身魔法を使えるのは、アクシーに生まれた娘だけ。母は変身魔法があまり得意ではないし、他人になりきることを嫌う。
 姉は……加害者へマウントを取るのに命を賭けているから、いつか刺されそうで心配だわ。
 お兄様は変身魔法が使えないし……カフシーの家業を何の問題もなく営めるのは、私しかいないのよ。

「いなくなったらいなくなったらで、どうとでもなんだろ」
「お兄様!」
「カフシーに骨を埋めるとしても、生涯独身とか無理だからな。家業に誇りを持ってんなら、元気で健康な、変身魔法を使える女児を生めよ」

 お兄様は私と二人きりなのをいいことに、最低最悪な言動をした。
 カフシーの将来を考えるならば、家業に必要不可欠な変身魔法を使える女児を産むことは、カフシーを継ぐ者の使命だわ。
 私が生涯カフシーで家業を営み続けるならば、生涯独身で居続けたらカフシーの伝統が途切れてしまうもの。当然のことかもしれないけれど……。
 お兄様から面と向かって子を孕めと言われるのは、なんだかムカつくのよね。

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