相思相愛・夫婦の日常~カケ♡サト編~
「あ、そうだね(笑)
でも、本当にそんな嘘をつかれてるなんて気づかないくらいに素敵な人だったの。
妊娠のことがあって、お父さんもお母さんも、とっても傷ついた。
冬休みの間に中絶手術をして、お父さんに“もう、忘れろ”って言われた。
ののえには全部話してたから、四人だけの秘密にしようって。
━━━━━お父さんがカケくんを認めないのは、凌央くんのことがあったからなの。
“あいつもどうせ、里海を裏切るに決まってる”って。
でも、お母さんと必死で説得して“籍だけは”受け入れてくれた。
でも、親戚には話してないの。
子どもも、絶対作るなって言われてる」

「そうだったんだね……」

「ごめんね、カケくん。ごめんなさい!
カケくんのご両親にも、迷惑かけてるよね?」

「ううん!
僕は、サトちゃんと結婚出来ただけで幸せだから!
大丈夫。
両親も、ちゃんと理解してくれてるから!」

「━━━━━里海、ご主人」
凌央が、翔琉と里海を見据える。

「ん?」

「本当に、すみませんでした!」
姿勢を正し、頭を下げる凌央。

「凌央くん…」

「俺は、自分のことばっかだった。
里海が入学してきた時、一気に惚れて、自分に彼女がいるってことを本気で忘れてた。
告白して、付き合ってる時も、何度も里海に話して、ちゃんとケジメつけてからまた里海にコクるつもりだったんだ。
でもその間に里海が他の奴に取られるんじゃねぇかって、そればっか考えてて、なかなか言えなくてズルズル卒業式まで引きずってた。
久しぶりに会って、やっぱり好きだなって思って、でも里海は人妻になってた。
それも俺は、自分のことを棚に上げて“なんで?”ってそればっかで………
情けねぇ…
━━━━━でも、もう最後にする!
里海の前からちゃんと、消えるから!
里海、本当にごめん!!」

「ううん!」

「あと、ご主人」

「何?」

「一つ、お願いがある」

「何?」

「俺を殴ってくれ!」

「は?」
「え……凌央くん!?」

「それで、ケジメつけたい。
俺は、それだけのことを里海……いや、あんたの大切な嫁さんにしたんだから」

「え!?
カケくん!!ダメだよ!!
凌央くんを殴ったら━━━━━━」

「大丈夫!!
これは、ケジメだから!
サトちゃんも、この人も、僕もケジメをつけてこれ以降この話は忘れる!!
ただし、一発だけ。その代わり本気で行く。
━━━━━サトちゃん、目、瞑っててくれる?」

翔琉の力強い視線に里海が頷き、ゆっくり目を瞑る。

それを見届けて、翔琉が凌央に“歯、食い縛ってなよ?じゃないと、舌噛むかもだから”と言って一度息を吐いた。
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