うちのクラスの吉田くん!

その33

 放課後。
 俺が吉田のいる部室に一緒に下校しようと行くと、吉田がなんだか興奮していた。

「……よっしー、今日はどうした??」

 また部活で大好きなロボや特撮の考察か何かをしていたんだろうと思い、俺は吉田にそう声を掛ける。

 すると吉田は興奮のまま口を開いた。

「なあ!! カズキだって、有名な兄弟主人公たち二人とそいつらの永遠のライバルやってる悪役が共闘して敵と戦ってたら、当然兄弟とライバルを応援するよな!?」

 突然過ぎる。
 そのうえ、名前は出さないのに具体的過ぎるくらいの例だ。

 吉田の悪いところは、たまに大切な説明がゴッソリと抜けるところ。
 興奮状態か、夢中になり過ぎて考えが一点集中し過ぎているときは特に。

 俺は苦笑しながら吉田の言葉に思わず頷き、
『今日は何か見たの?』とだけ聞いた。

 すると吉田は即座に携帯画面を開き、二次部(二次元同好会)の部長であるハマ先輩が教えてくれたという、ゲームのプレイ動画を見せてくれた。

 ……世界でも有名なはずの赤と緑の兄弟と、そのライバルのキャラのこと!?

 画面に映されたのは俺でも見覚えがある、
オーバーオールのヒゲ兄弟とイカツイ亀のようなライバルが、それぞれ敵に立ち向かっている戦闘シーン。
 そのうちの、ライバルの方が戦っていたのは巨大な敵だ。

「俺、感動しちまった!! これはこのゲームのシリーズの三作目なんだって! この続編なんか、緑の弟の方が“兄弟愛”で巨大化するんだってさ!! 巨大化とか兄弟愛とか、もう“ロマン”だよな!! 続編も見てえぇぇぇ!!」

 ……いきなりのかなり色々な情報。しかも聞きたいところも満載だ。俺も少し気になったけど、これは絶対に吉田なら……

 そうは思っても、俺は止まらない吉田の勢いに押されたまま苦笑い。


 夢中になると徹底的にやる吉田は数日後、当然のように格安の中古でそのゲームのシリーズを手に入れた。
(吉田が持っていた前々世代の携帯ゲーム機のゲームシリーズ)

 吉田は夜や休みにゲームを進めていく。
 そして俺には、休み時間や放課後にゲーム画面を見せながら自分が進めたところまでの細かいストーリーやゲームシステムを、前作品の設定も混じえて説明してくれた。

 しかも、俺に話してくれた三作目と四作目のゲーム二本分を。

 さすが渡瀬はそれに巻き込まれる前に逃げに回る。
 しかし俺の方はずっと吉田のそれに付き合い、当然プレイしていた吉田と同じくらいそのゲームの内容に詳しくなった。

 ついには、シリーズの最新作までも俺はつき合わされることに。
 ちなみに吉田自身はゲームシリーズ全作品をプレイしたのは言うまでもない。
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