朝型ちゃんに一目惚れ
「わあ……!!」

 みんなが朝の海に感嘆の声を上げる。

 広い砂浜に遥かに広がる海、色とりどりのボードやヨット。

「みんな、前を見ろ!海だぞ〜!!」

 探検隊気分だったらしい吉田は海の果てに向かって叫ぶ。

「騒ぐな、よっしー。みんな分かってるから」

「そうだよ、山じゃないんだからさ……」

「吉田くん、サーファーもいるみたいだし、恥ずかしいから……」

「お兄ちゃん、もうっ」

 それぞれツッコミは入れるけれど、みんな海を見ている。

 俺にとっても久々の海。そして初めての、朝に見る海。

「話には聞いていたけど、なかなか来られない場所だから嬉しいです!」

 いつの間にか俺の隣りに立っていた陽菜ちゃんが、目を輝かせながらそう言った。

「俺もだな、朝の海ってこんなに良いものなんだな……」

 吉田は海を見ながら愚痴る。

「もっと近けりゃな〜!!しかもまだ泳げないしさあ!」

「じゃあ、来ないほうが良かったか??」

 渡瀬の意地悪そうな返しに、吉田は熱く語りだした。

「海はなあ、いつ来たってロマンなんだよ!分かるかワタ!?そんな軟弱な隊員に育て上げたつもりはないぞ!!」

「…俺は隊員じゃないしお前の部下になったつもりもないし育て上げられた覚えもないな。お前よりムードは分かるし?特撮の見過ぎだ、よっしー」

 渡瀬の嫌味が出たところで、みんなで砂浜に出ることにした。
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