朝型ちゃんに一目惚れ
 電車を乗り継ぎ、みんなが来たことが無いと言った、別の県の海へ……


「っしゃああああ!着いたぞ海っっ」

 休日朝の到着駅、吉田がテンション高めで言う。

「…まだ駅だろ」

「よっしーは、ほっとけ」

 吉田に呆れる俺、スルーする渡瀬を仁科と陽菜ちゃんが笑い、海に向かって五人で歩き出した。


 道を調べてみるとだいぶ遠いことが分かった。
 それでも全然苦にならず、みんなと楽しく話しながら人のまだ少ない観光地の海を目指して歩く。

「海だあ!海が俺を呼んでるっっ!みんな俺に続け!こっちだああ!」

「…よっしーのテンションは高いのに低レベルだ」

 年間の学校行事なんかではやたらテンションの上がる吉田。
 渡瀬はいつも通り冷静にツッコむ。

「ワタは普通通りだな……」

 半ば感心する俺に、渡瀬は笑いながら返す。

「“吸血鬼カズキくん”のほうは変わったもんな!お前朝なのに平気そうじゃん!…よっしー、あの調子じゃ絶対午後に寝るだろ!」

「さすがワタ!よく分かってらっしゃる……!」

 テンションの高い吉田に続き、俺と渡瀬、二人笑って盛り上がる後ろで仁科が一言。

「…あんたたちねえ、年下の陽菜ちゃんが呆れてるでしょ。私からすれば三人揃って似た者同士よ、恥ずかしい……!」

 陽菜ちゃんは呆れる仁科の隣で、太陽みたいに楽しそうに笑っていた。
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