紳士な若頭の危険な狂愛

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私の働いている場所は小さな町工場。
その会社で経理を任されている。

高校三年生の時に就職活動をしたが、予想以上に厳しいものだった。
そもそも高卒で取ってくれる会社が少なかった。
そんな中で採用してくれたのがこの会社。
社長自ら面接していたが、採用後に社長から聞かされた。
社長自身奥さんを早くに亡くして男手一つで一人娘を育てたことを。
だから私に同情してくれたのか、今も気遣ってくれている。
五十過ぎで丸顔の温和な社長はこの小さな会社で絶大な信頼を得ていて、地区のまとめ役をしたりと面倒見のいい人だ。

私はすでに24歳、社長の一人娘、絵理奈ちゃんは短大に入ったばかり。
絵理奈ちゃんは私を姉のようだと慕ってくれ、私も彼女が可愛くて仕方が無い。
そんな絵理奈ちゃんとは中学生くらいから社長とギクシャクしているそうで、よく社長から悩み相談も受ける。
そんな悩みは親子がいるからで、お互いを思い合っているからこそのものだろう。
私からすれば幸せな悩みであり、二人の仲を取り持てるなら少しでも力になりたかった。

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