紳士な若頭の危険な狂愛
「もしかして店の近くに行ってるんですか?!」
『店があるらしい繁華街にいる。
だけど絵理奈が行ってる店がわからないんだ。
怪しげな店ばかりで、何人かにケイという男を知らないかと聞いても知らないと言われるだけで』
「わかりました、私も探します」
『いや、こんな場所に女の子が来るもんじゃ無い』
社長がきっぱりと言う。
そうかもしれないが、そういう店なら男より女の方が怪しまれない。
「何かあれば警察を呼びますから。
それにもう家に帰って寝ているかもしれないでしょう?
行き違いにならないように社長は家に戻ってください」
少しだけ間が開いた。
騒がしい人の声だけが聞こえる。
社長も悩んでいるのだろう。
『十二時まで。
それまで見つからなければすぐ家に帰って欲しい。
僕も随時連絡する。
市谷さんを巻き込んで申し訳ないけれど、決して危ないことをしないでよ』
私はわかりましたと答え、急いで部屋着から動きやすいジーンズとちょっと胸元が開いたカットソーに着替えた。
向かうのは繁華街、周囲から浮きすぎない方が良い。
私は防犯ブザーなども大きめの鞄に突っ込んで急いで家を出た。