紳士な若頭の危険な狂愛

「絵理奈ちゃんだと色々まずいんですけど、綾菜さんは20歳超えてますよね?
ちょうど貴女になら良いお仕事あるんですよ。
一ヶ月働くだけで簡単に返済できます。
いかがですか?」

終始ニコニコしている男の目は、全く笑っていなかった。
やばいヤツだ。
だが、怯えきっている絵理奈ちゃんを一人だけでも逃がす方が良いのでは無いだろうか。
社長には厳しい就職状況の中拾ってもらい、その後も気にかけてもらった恩がある。
そんな社長が必死に育ててきた大切な娘が傷つくなんてこと、させたくはない。
それに比べ私は天涯孤独。
どっちをとるかなんてわかりきっていた。

「わかりました。
お仕事の話を聞きたいのでまずは絵理奈ちゃんを解放してください」

驚いている絵理奈ちゃんを安心させるように微笑む。
男は腕を組んで私と絵理奈ちゃんを見比べた。

「良いでしょう、綾菜さんを信頼してその子には帰ってもらおうか。
でも絵理奈ちゃん、ここであったことは誰にも話しちゃだめだよ?
大切なお姉さんと二度と会えなくなっちゃうかもしれないってわかるよね?」

小さな子供に言い聞かせるかのように、人差し指を立てて絵理奈ちゃんに男は話しかける。
絵理奈ちゃんはひくひくと声を出して涙を流しながら頷いていた。

その様子を見ながら、自分がこの後どうされるのか現実感がわかない。
わかるのはろくでもない未来だけだ。
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