紳士な若頭の危険な狂愛
「いいねぇ、ゾクゾクする」
いやらしく口の端をあげた男が私の両手を床に片手で縫い止め、両足をばたつかせようとしたら足で押さえられた。
最悪を想定していたわけでは無かったのに、現実となると恐ろしい。
自分の目から涙が落ちていることも気づかないほど、私の心は何も感じないほどに凍っていくのがわかった。
音がした。大きな音が。
うめき声と物の倒れる音。
私は横たわったまま、聞こえているようで理解できない音を考える気力も無かった。
私に覆い被さっていた男が立ち上がったがすぐに私の視界から消えた。
代わりに私を心配そうな表情でのぞき込んだのは、彼、だった。
「もう大丈夫ですよ」
優しい声が聞こえ、また涙があふれる。
まさか本当に美東さんが来てくれただなんて。
大きな手が私の背中に回り、ゆっくりと身体を起こしてくれた。