いつしか愛は毒になる
──ピピピピッピピピピッ

私は目覚ましの音に瞼を開けると、すぐに一人きりで眠っているベッドから起き上がる。顔を洗い、キッチンへ向かうとポットにお湯を沸かし、そしてオーブントースターに五枚切りのトーストを一枚入れてから、雅也のお気に入りの食器ブランドである、ティーラのマグカップを取り出し、ドリップコーヒーをセットした。

ガチャッと雅也の寝室兼書斎の扉が開く音がして、私は、はっとする。

(しまった! あれを洗面所にかけてない……)

私は、慌てて昨日クリーニングから戻ってきたばかりのワイシャツを抱えた。

早苗(さなえ)

「あ……雅也さん、おはようございます」

振り返れば雅也が不機嫌な顔でこちらを見ている。

「……ごめんなさい……雅也さんのワイシャツ、クリーニングから戻ってきて……私……」

雅也が私の目の前に立つと、まだビニールのかかったワイシャツを乱暴に取り上げた。そしてそのままワイシャツを私の顔に向かって振り下ろした。

「きゃっ! ……痛っ」

「ったく!何度っ! 言ったらっ! わかるんだっ!!」

雅也は数回私の顔をワイシャツで叩くと、かけている黒淵メガネを上げ直した。

「クリーニングから戻ってきたらビニールを外し、洗面所のところに吊り下げておく、こんな簡単なことが、お前にはどうしてできないだ!」

「ごめんなさい……次から気を付けるから……」

「お前の、次は聞き飽きた!」

「雅也さん……どうか許してください……」

私はリビングの床に土下座をした。
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