いつしか愛は毒になる
「ったく……子供も産めず、なにかと無能な妻をもつとほんと苦労するよ」 

雅也はそう言うと、洗面所へと朝の用意をしに向かって行く。結婚して三年経つが、私と雅也のあいだに子供はいない。

何度も婦人科で診てもらったが、私の身体に特に問題はないにも関わらず、なかなか妊娠に至らない。

(そういえば……雅也さんと最後に夜を共にしたのはいつだろう……)

いつからか雅也は仕事の疲れを理由に、ほとんど私を抱かなくなった。そして時折、洗濯の際に雅也のワイシャツに口紅がついていることも私は気付いているが、一度も問いただしたことはない。

平凡な顔に普通のスタイルで、何の取り柄もなく、箱入り娘として育てられた私は何をしてもうまくできなくて、気が利かず、すぐに雅也の機嫌を損ねてしまう。

いつからか私は、雅也の顔色ばかり伺うようになっていた。

(雅也さんが着替えてくる前に言われた通りの朝食並べなきゃ……)
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