いつしか愛は毒になる
一ヶ月半後──

『ついたので、先に入ってるね』

私はスマホに浮かんだメッセージを眺めながら、長いブラウンの髪を耳に掛けながら喫茶店の扉を開けた。

カラン、という入店を告げるドアベルの音に奥の席に座っていた早苗が、こちらに向かって手を挙げた。

「麗華さん、お時間作ってくれてありがとう」

「全然。早苗さん元気そうで良かった……」

私は早苗の目の前にすでに運ばれてきているオレンジジュースを確認してから、店員にアイスコーヒーを注文すると早苗の前に腰かけた。

「無事に新山社長……あ、雅也さんと離婚できて良かったわね」

「えぇ、保釈金と引き換えに離婚届けにサインしてもらって家も引き払ったの。麗華さんから紹介してもらった弁護士さんにもついてもらって、今後雅也さんが私に関わることがないよう誓約書も書いてもらったし……色々と本当にありがとう」

早苗が鞄から分厚い封筒を取り出すと、私の方へそっと差し出した。私は封筒の厚みを確認すると自分の鞄へ仕舞った。

久しぶりに見る早苗は以前とは別人のように明るく、生き生きとしている。あんなに雅也に気を遣い常に神経をすり減らしていた人物と同一とはとても思えない。
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