冷淡上司と有能若頭は、過度に私を愛おしむ (短)
優しい若頭





「ご、ご馳走様でした……っ」
「お粗末様でした」


将棋の対戦後のように、一つの机を挟んでお辞儀をする私とイケオジ――こと志波(しば)行春(ゆきはる)さん。机上には、空になった小鉢がたくさん並んでいる。


「すごいレパートリーの数でした。和洋中のみならず、デザートまで。まるでビュッフェのようで、美味しくて……とても楽しかったです」


舌鼓を打った料理たちの感想を述べる。美味しさの余韻で、私の頬は光悦し赤く染まっている。思い出すだけでも、それらは本当に美味しかったのだ。


「それだけ絶賛してくれたら、振る舞った甲斐があったよ。来てくれてありがとうね」
「い、いえ!お礼を言うのは、私の方です。すごく素敵な時間でした、ありがとうございました」


もう一度、深々とお辞儀をする。
その時、下げた瞳に写る畳――畳に詳しくない私でも、ここに敷かれてある畳は「高価」だと容易に想像できる。それくらい、ここにある畳は質が違う。一畳一畳が光っているように見え、自分がまるで黄金の草原にいるみたいだ。
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