あのメガネアイドルは…。

羽村純という存在



扉の向こうは目を瞑ってしまう程に眩しい日差しが差し込んでいた。

青空の下。


制服を着ていることから生徒だとわかる1人の男子の後ろ姿があった。

その男子の足元には、歪んだバケツとカラフルな袋。
 

錆びた扉を開ける音で、真白に背を向けていたその人がこちらを振り返る。


その人と目があって、真白は驚いた。

その証拠に目が見開いて、心臓がギュッと苦しくなった。



グレーの髪はレイヤーが入ったストレートで長髪。

前髪で隠れた目元。 

時折見える真っ黒の瞳には光がない。


真白と同じクラスの羽村純(はむらじゅん)がそこにいた。


問題行動は数え切れない。


“暑かったから“という理由で授業をサボり制服のままプールに入ったり。

グレーの髪だって、染髪は校則違反である。


しかし、それを先生達は問題視していないようにみえる。 

口頭で注意して、はい終わり。


だから、なのか

「タバコを吸っているらしい」 
「中学生にお金をカツアゲしてるんだって」

このような噂が絶えない。


この"らしい"や"〜だって"はものすごい勢いで、人から人に伝わっては形を変えてゆく。


それを否定も肯定も訂正もしない羽村。



そんな彼をいいことに裏では言いたい放題。

彼に近づいたり、ノートを配ることですら恐れているくせに。
< 7 / 85 >

この作品をシェア

pagetop