愛しのあの方と死に別れて千年<1>


「――というお話ですわ、アーサー様。……あら」

 話を終えたヴァイオレットは、アーサーの反応をうかがおうと顔を覗き込む。――けれど。

「……ふふっ」

 そこには、いつの間にやら眠ってしまったアーサーの姿。彼は気持ちよさそうに寝息をたてている。

「なんてお可愛らしい寝顔なのかしら」

 ヴァイオレットは微笑んで、アーサーの銀の髪をさらりと撫でた。そしてその頬に、そっと唇を落とす。
 アーサーを見つめる彼女の瞳は、深い慈愛に満ちていた。

「まだまだ夜は長いですわ。よくお休みになってくださいませ」

 彼女はアーサーの耳元で愛しげに囁き、アーサーを起こすまいと、そっとベッドから下りた。

「――良い夢を」

 そう言い残し、ヴァイオレットは部屋を後にした。
< 147 / 195 >

この作品をシェア

pagetop