【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈1〉

「――っ!」

 ああ、痛い。痛い、痛い――痛い。もう……心が……痛くて。

 自分ではどうすることもできない。
 この涙を止めることができない。溢れ出す想いを……もう、私には……。

「アメリア……どうして、泣いてるの……?」

 私の顔を覗き込むライオネルの姿が、涙で滲んで……もう、見えない。

 ――ねぇ、エリオット、エリオット。あなたはいったいどこにいるの。どうしてあなたはここにいないの? どうして私を抱きしめてくれないの……?

 心が痛い。かつてのエリオットそのままの姿のウィリアムに(すが)りたくなる思いを、こらえ切れずに……。

「……アメリア」

 ウィリアムの顔が歪む。苦しげに私の名を呟いて、その瞳を葛藤と焦燥に揺り動かす。
 私の大好きな深い森の草木色の瞳に、私の姿を映し出して……。

 ――あぁ、エリオット。あなたを心の底から愛しているわ。

 私の中でエリオットに微笑みかける昔の私。とめどなく溢れ出す涙とは裏腹に、ウィリアムに微笑みかけるあの日の私。それは――なんという狂気か。

「……アメリア」

 引きつった表情で、私を呼ぶ彼の声。
 それがとても嬉しくて、切なくて、そして――愛しい。

「俺は……」

 ウィリアムの瞳が揺らぐ。そこに映るのは愛情か、それともただの同情か。

 でも今の私には、それがなんだろうと関係ない。彼の本心なんてどうだっていい。
 私にとって重要なのは、彼が私を見てくれているという事実だけ。
 彼が本心から、私のことを考え悩んでくれているという、その一点のみ――。
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