愛しのあの方と死に別れて千年<1>

 苦しみと葛藤に震えるウィリアムの声。私を強く抱きしめる彼の腕。
 それはとても温かくて、優しくて……どうしようもなく、苦しい。

「アメリア……お願いだ。これ以上、自分を傷つけるのはやめてくれ。どうかもう泣かないでくれ。これからは俺が君を守ると誓うから。俺が君のことを愛すると約束するから」
「……っ」

 ――あぁ、それはなんと懐かしい言葉。あの日彼と誓い合った、深い愛の契り……。
 もう二度と叶うことはないと諦めていた。けれど今、確かに私は彼の腕の中にいる。
 ルイスのおかげで、再び彼に抱きしめてもらうことができたのだ。

 嘘でもいい。これがウィリアムの本心だなんて思わない。けれどそれでもいいの。それでも、私はもう十分幸せよ。

 彼の言葉に応えようと、私はその背中に腕を回す。
 すると彼はとても驚いたように私を見つめた。

「君は……俺を、許すのか……?」
「……?」

 私には少しもその意味がわからなかった。
 けれど私は彼のために、精いっぱい微笑んでみせる。

 するとその瞬間、大きく見開かれる彼のヒスイ色の瞳――。

「君を必ず幸せにする。神に誓おう――君の傍を、もう二度と離れないと」

 そう宣言した彼の顔は、まるで本当にあの日のエリオットのようで。

 永遠を誓い合った、あの日の彼そのもので――。
 私は溢れる想いを抑えきれず、ウィリアムの胸に縋り付く。

「アメリア、愛しているよ」

 耳元で囁かれる彼の声。愛しい愛しい私のウィリアム――。

 正午を知らせる教会の鐘が鳴り響く。
 いつの間にか雨は止み、虹の掛かる青空に、澄んだ鐘の音が鳴り響く。

 それはまるで私たちの再会を祝福するかのように、何度も、何度も、凛とした音を街中に響き渡らせた。
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