愛しのあの方と死に別れて千年<1>
第2章 縁談の行方
1. 計画の失敗
「――やられた……!」
私は焦りと苛立ちを抑えきれず、自身の拳をテーブルへと振り下ろした。
ここは私の自室である。カーテンの締め切られた部屋は陰鬱とし、重苦しい空気で満たされていた。
ウィリアムを招待したお茶会から十日が経ち――私は今日までウィリアムから縁談が取り下げられるのを待ち続けた。
だが待てど暮らせどその知らせは来ない。それどころか父親のもとに、ウィリアムの父であるウィンチェスター侯爵から息子をよろしくとの手紙が届く始末。
何かがおかしい――そう思ってようやく執事にウィリアムのことを詳しく調べさせたのが三日前。
そして今、テーブルにはウィリアムの付き人、ルイスについての報告書があった。
「この男……いったい何者なの」
――ウィリアムの付き人、ルイス。
私自身と、私に対する使用人の評価を調べ上げた張本人。
だが伯爵家の情報網をもってしても、ルイスについてのほとんどを知ることができなかった。
出自も年齢も不明。わかったことといえば、彼はもともと孤児であったということ。
親もなく家もない。そんな彼を、ウィリアムが拾って付き人にしたのだという。
確かにそれならば出自も年齢も不明なことに納得がいく。けれど、それでは困るのだ。
常識的に考えれば、ルイスはウィリアムの指示で私のことを調べたと考えるのが妥当である。けれどお茶会でのウィリアムはそれを知った風ではなかった。
ということは、指示をしたのはウィリアムではないということ。――なら、いったい誰が?
「可能性として一番高いのは、ウィンチェスター侯爵だろうけど……」
私は焦りと苛立ちを抑えきれず、自身の拳をテーブルへと振り下ろした。
ここは私の自室である。カーテンの締め切られた部屋は陰鬱とし、重苦しい空気で満たされていた。
ウィリアムを招待したお茶会から十日が経ち――私は今日までウィリアムから縁談が取り下げられるのを待ち続けた。
だが待てど暮らせどその知らせは来ない。それどころか父親のもとに、ウィリアムの父であるウィンチェスター侯爵から息子をよろしくとの手紙が届く始末。
何かがおかしい――そう思ってようやく執事にウィリアムのことを詳しく調べさせたのが三日前。
そして今、テーブルにはウィリアムの付き人、ルイスについての報告書があった。
「この男……いったい何者なの」
――ウィリアムの付き人、ルイス。
私自身と、私に対する使用人の評価を調べ上げた張本人。
だが伯爵家の情報網をもってしても、ルイスについてのほとんどを知ることができなかった。
出自も年齢も不明。わかったことといえば、彼はもともと孤児であったということ。
親もなく家もない。そんな彼を、ウィリアムが拾って付き人にしたのだという。
確かにそれならば出自も年齢も不明なことに納得がいく。けれど、それでは困るのだ。
常識的に考えれば、ルイスはウィリアムの指示で私のことを調べたと考えるのが妥当である。けれどお茶会でのウィリアムはそれを知った風ではなかった。
ということは、指示をしたのはウィリアムではないということ。――なら、いったい誰が?
「可能性として一番高いのは、ウィンチェスター侯爵だろうけど……」