愛しのあの方と死に別れて千年<1>
――それにしても、何度見ても凄い部屋。
そこにはエドワードとブライアンによって、賭け事という名のありとあらゆる娯楽が集められていた。トランプ、ダイス、チェスにダーツ、ルーレット、ビリヤード、そして先週カーラがここに入ったときにはなかったはずの、ボーリングらしきものまで用意されている。
カーラはそれらに一瞬気を取られるが、すぐさま我に返りエドワードを睨みつけた。
「エド兄さま! それどころではありませんの!」
カーラは扉を閉めぬまま、二人の兄へと歩み寄る。
「ウィリアム様が婚約なさったのです!」
叫ぶように言い放った彼女の顔は悪魔のような形相だ。
エドワードとブライアンはそんな妹の姿に、ははーんと顔を見合わせた。
「お前、まだウィリアムのこと好きだったのか」
エドワードはテーブルにもたれて両腕を組む。からかうような笑みと共に。
そんな兄と同じくして、双子の弟ブライアンもやれやれと肩をすくめた。
「お前さ、いい加減諦めろ。あいつはお前のことなんて眼中にないって」
「そうだぞ。それに絶対あいつ、釣った魚に餌をやらないタイプだぜ」
「ああ、お前とはいろんな意味で釣り合わない。悪いこと言わないから止めとけ」
兄たちの心ない言葉に、カーラの頬は怒りで赤く染まる。
「そんなことないわ! ウィリアム様はわたしと結婚してくださるって言ったもの!」