愛しのあの方と死に別れて千年<1>

3.双子の追憶――貧民街の少年

「あのー、アメリア嬢?」
「アメリアで結構ですわ。わたくしも名前で呼ばせていただきますから」
「じゃあ……アメリア、本当に外に出るの?」
「ええ。どうせあなた方も、舞踏会なんて退屈だと思っていたのでしょう?」
「……まぁ」
「それは否定しないけど……」

 二人はアメリアの誘いに乗り会場のテラスから庭園に抜けた。そして気付けば、会場の明かりの届かない屋敷の裏側に連れてこられていた。

 そこでまさかと思った二人がアメリアに尋ねると、彼女は先の発言のとおり、屋敷の外に出ると言ったのだ。

 まさか舞踏会を抜け出すなど前代未聞。最初は冗談かと思ったが、アメリアの表情は至極(しごく)真面目なもので――とはいえ二人には彼女の表情など読めないが――冗談を言っているようには見えない。そもそも冗談でこのような使用人用の裏口にまで来るはずがない。

「……だけど君、ご両親と来てるんだよな?」
「急にいなくなったら心配するんじゃないか?」
「嫌ならお戻りになって結構です」

 その突き放すような言い方に、二人は顔を見合わせる。
 ――もうここまできたらヤケクソだ。乗りかかった船だ。

「行くよ、行けばいいんだろ」
「さすがに君一人で行かせられないし」

 二人は投げやりに答える。するとその言葉に、アメリアが少しだけ微笑んだように見えた。

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