愛しのあの方と死に別れて千年<1>


「いらっしゃいませー!」

 三人が店に入ると、ハツラツとした女性店員の声が響く。
 テーブル席に料理を運んでいるウェイトレスが彼らを笑顔で出迎える。

 内装は簡素なものであった。木製の床に、板を組み合わせて作られたテーブル、クッションのない腰かけ。壁に絵画や装飾もない。

 店内の広さにおいても、中産階級用とスペースを分け合っているだけあって、お世辞にも広いとは言えない。四人掛けのテーブル席が三つに、立ち飲み用の高いテーブルが五つ。あとはカウンター席が八席あるだけだ。

 けれど清潔感は保たれており、エドワードとブライアンはひとまず胸を撫でおろした。

 テーブル席は全て埋まっている。立ち飲み席も、酒をくみ交わす男女で溢れていた。

 これからどうするのだろうと二人がアメリアの様子をうかがえば、彼女はカウンター席の右から三つ目に座ろうとしている。それを見た二人は、その右隣の残り二席に座ればいいのだろうと判断し、アメリアの右側に並んで座った。
 するとその間に、アメリアはいつの間にかバーマンを呼びつけていた。

「ご注文はお決まりですか?」
「エールを三つお願い」
「かしこまりました」

 少しすると、アメリアに三杯のジョッキが差し出される。彼女はその場で三杯分を支払い、ジョッキを受け取った。

「はい、どうぞ」

 アメリアがニヤリと微笑んで二人にジョッキを手渡す。

「エールよ。飲んだことぐらいあるわよね?」
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