愛しのあの方と死に別れて千年<1>

5.悪女と呼ばれる理由

「だから俺たちはそれを機に、自分のしたいことをし、言いたいことを言うようにすると決めたのさ。そういう訳で、今でも時々平民に変装して夜の街にくり出してる」
「そう。だからアメリア嬢には実のところ感謝してるんだ。彼女は確かに口調もキツいし、舞踏会を抜け出すような、レディの風上にも置けないお方だけどな」

 そう言って、うんうんと頷き合う二人。
 その姿に、アーサーは思い切り吹き出した。

「ぶっ――あっはっはっは!! 確かにあるときからお前たちの様子が変わったと思っていたが、まさか彼女が原因だったとは!」

 アーサーは文字通り腹を抱えて爆笑する。

「お前たちが平民の振りをして街歩きをしているなどとクリスが知ったら、きっと卒倒するだろうな!」

 そう言ってひたすら笑い続けるアーサー。しかしカーラはそれを許さない。

「笑い事ではありませんわ! よもやウィリアム様だけでなく、兄さま達までもたぶらかすなんて――わたくし、絶対に許せませんわ!!」

 耳まで真っ赤にし、怒りに肩を震わせるカーラ。
 そんな妹の姿に、エドワードとブライアンは顔を見合わせた。

「おいおい、別に俺たちはたぶらかされてないぞー」
「そうだぞ。今の話ちゃんと聞いてたか?」
「黙らっしゃい!! 兄さまたちが堕落(だらく)した生活を送るようになったきっかけはアメリア様なのでございましょう!? それをたぶらかすと言わずして何と言うのですか!!」

 カーラは二人をキッと睨みつける。
 そしてどういうわけか、慌ただしく部屋を出ていった。
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