妖狐の末裔の狐森くんは、嬉しいと狐の耳が出てくる

ふたりきり



立ち上がっても離れない手。

狐森は尻尾が出たままで、この手について何を考えているのかわからない。

足を怪我したわけでもないし、手を繋いでいる理由が西村には本当にわからなかった。


保健室の扉には【先生、外出中】の文字。


狐森「とりあえず、消毒と絆創膏くらいは僕でも出来るので。」

保健室の扉を開けて、西村を連れるように入っていく。


狐森「ソファに座っててください」

西村「うん」

西村の目が行くのは、狐森の尻尾。

あの日、5歳の頃に泣きながら「さよなら」をした時以来に見た尻尾だった。



傷を水道で洗った後。

狐森「消毒しますね」

消毒液を含んだガーゼを傷口にあてる。


まずは頬。

西村「痛っ」  

狐森「僕の腕でも掴んでいてください」

そう言って、ガーゼを持つ手とは逆の左腕を出した。

西村は狐森のシャツを握った。


西村「痛い!痛い!」

こうして、頬も肘も消毒をして絆創膏を貼った。


狐森「大丈夫ですか?
他に痛いところはないですか?」

西村「うん、ありがとう」

狐森「いえ」


狐森が西村の横に座った。

西村「尻尾、なんで出てたの?」
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