あの道を、貴方と。
(で、気づいたらここにいた、と。なんで⁉︎)

全く理解ができないけど、誰かこの状況説明してもらえませんか?なんか知らないけど、周りの人全員着物なんだけど?

(ってか、わたし、めっちゃ目立ってない⁉︎忍び装束って・・・)

よく忍者は黒装束を着ているイメージがあるっていうけど、実際はそんな物ない。だって目立つもん。

それに、実際の暗闇は真っ黒じゃなくて紺色だし。普通、情報収集するときはその時に合わせて服装を変えるし。ただ、動きやすいっていう理由で訓練中は紺色の黒装束を着ているだけ。

(それがこんなことになるなんて・・・とりあえず着替え!)

道端だから視線を向ける人は少ないけど、けど、いたたまれない。

(確か、ここに圧縮しておいたよね・・・)

草の茂みに隠れて手早く着替える。その時間、わずか三秒。

(とりあえず、オッケー・・・?いや、結構目立つかも。この雰囲気だと・・・アウト?)

まさか周り全員着物という格好だとは思っていなかった。今のワンピースじゃあまだ目立つ。

それに、肩で切り揃えているこの髪も結っている人たちの中にいるとめっちゃ目立つ・・・!

(どうしよう・・・あれ?なんでみんな着物なんだろう・・・?)

今の時代、着物なんて夏祭りとかじゃないと滅多に見ない代物じゃない。なんで?

「あの・・・すみません」

「え?なに?」

考えていると突然誰かに肩を叩かれる。考えていたからとはいえ、後ろから人がくるのに気づかなんて・・・ショック・・・。

「いや、すごく困っているように見えたので・・・何かできることはないかな、と」

(え、イケメン・・・)

第一印象はそれ。イケメン。

がっしりとした腕に少し細い目。黒い髪はゆるく括って前に垂らしている。目尻が下がっているからか、「ナンパしてきた人」っていう印象はすぐに消えた。

「・・・あ、困ってます、困ってます!」

一瞬ぼうっとしちゃた。慌てて応えるとクスッとその人は笑って、「なにに困っているんですか?」と言う。

「あの、き、着物ってありますか?女物の」

「着物ですか?妹のものならありますよ。ついてきてください」

そう言って彼はスタスタと歩き始める。

(あれ・・・?この人の歩き方、なんか・・・変なかんじ)

なんていうか、わざと歩き方にしてるみたいな感じ。ちょっとの違いかもしれないけど。

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