あの道を、貴方と。

「では、行ってらっしゃいませ」

出発予定日の十一日。わたし達は今からここを主発して白河の関へ向かう。すっかり顔馴染みとなったお屋敷の人達ともお別れだ。

「あぁ、お前達も気をつけてな」

二人でこれからの健闘を称え合ってるのをしているのを横目で見つつ、わたしは荷物の最終確認。二人の最後の逢瀬を見届けたら出発だ。今日を入れて十日で白河の関へ向かう。

ちなみに白河の関っていうのは今の福島県にあった奥州の入り口って言われていたところのこと。ほら、一年前の夏にちょっと話題になったじゃん。大阪でやってる某野球大会で宮城の高校がかって「優勝旗が白河の関を越えた」って・・・知らないかもしれないけど。

「さあ、曾良、行きますよ」

「あ、はい」

いつの間にか逢瀬は終わってたみたい。少し急足で先に行っていた芭蕉についていく。今日からはひたすら歩く歩く歩く。

比較的近い場所にあるから急ぐことはないけど、カモフラージュのためにいろいろなところに寄り道するから体力と精神的にちょっとキツいかもしれない、って先に新に言われている。だから最初にはしゃぎすぎるな、とも。

(わたしが「別にはしゃいでないけど⁉︎」っていったら「最初の方は結構浮かれて歩くのが早かった。それでもはしゃいでないというのか?」って言われて仕方がなく認めた。けど、わたし、そんな浮かれてなかったよ⁉︎少なくてもそんな歩くの早いって程っじゃないと思うけど・・・)
緩やかな坂を登りながら、わたしは一人ため息をついた。
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