忘れられた恋の物語
「…柵を越える動作が慣れてますね。俺の手も借りないで。もしかして何度もこういうことを?」

「さっき定位置だって言ったじゃないですか。」


何でもないことのように答えた彼女に悲しみと怒りを覚えた。


「…"定位置"って。危ないだろ!」


自分が大きな声を出したことに驚いた。

焦って彼女を見ると、目を真ん丸にしていた。


「…すみません。怒鳴って。でも死のうとなんてしないでほしい。」

「本当に死にませんよ。」


彼女はまたもや軽く答えた。

初対面の俺に言われても、彼女の心に自分の言葉が響くとは思わない。

それでも死ぬ前のように何もしないままこの期間を終えたくなかった。


「…お願いだから生きてほしいんだ。」


そう言っても、彼女はそっぽを向いてしまった。


「…死にませんってば。本当に大丈夫です。もう帰りますね。」

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